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ロードバイク インプレッション cervelo R3 SL 幼年期の終わり 4

2004年にアンダー1000gの重量とプロの脚力を受け止める剛性をもってcr1がデビューしてから、カーボンフレームは大口径、肉薄、軽量、高剛性を一つのトレンドとして、各メーカーはその山の頂を登らんとしのぎを削りあう。

アルミフレームの大口径、高剛性化が進む中で突き上げがきつく過剛性気味のフレームはライダーの足を痛めつけてしまったのか、この頃から各メーカーがカーボンフレームの可能性に活路を見出し、ビッグレースにもカーボンフレームが活躍を始めるようになる。

まだ、カーボンによるフレーム製造技術の黎明期だったのだろうか、カーボンの素材特製を重量辺りの剛性比率、そして金属にはない造形の自由度が、パイプの異形加工によっても剛性をコントロール出来る事にフォーカスされて、ひたすらに軽さと硬さを正義としていた頃の話。

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もっと軽く、もっと硬く。そんな流れの中で2006年にR3、2008年に更にブラッシュアップされたR3-SLが産声を上げる。

この軽さと硬さを正義とする気持ちは、もはや信仰のようになっていたのではないだろうか

たとえば愛が全て。love is all と信じる人たち

たとえば筋肉が全て。プロテイン is all と信じる人たち。

こういう一義的な価値観を全てと信じて前に進んでいける姿勢には、どこか開けっぴろげで陽気な力強さがあるように感じてしまう。

軽量、高剛性を正義として突き進んでいくシーンにも何処か勢いと明るさと希望があふれていたのだ。

 

だけれど今になって振り返ってみると、そこに高度経済成長時代の日本の姿をそこに重ねてみてしまうのだ。

科学技術の進歩が、原子力が、経済の発展が全ての問題を解決して、人類の未来はもっと明るく楽しくなっていく、無条件にそう信じていられた頃の世相の力強さと明るさに。

アメリカを象徴する豊かな社会を目指して作り上げた大量消費型のマッチョな社会は、公害問題を皮切りにバブル崩壊、失われた10年を経て今の混迷に至っている。

科学、経済、原子力、そういうものを拠り所に作り上げた社会はいつの間にか拠り所を失ってしまった。これらを無条件に信じて突き進んでいた社会は、祈るべき神を見失ってしまったのだ。

そしてこれからの社会の、世界のあり方を探しながら誰もその問いかけに明確に答えられないでいる。

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自転車の世界においてそこまで悲観的なパラダイムシフトが起こったわけではないけれど、それでも軽量、高剛性の道をひたすらにまい進していた流れから、突然目を覚まされた瞬間があったのではないか。

土地の値段は際限なく上がっていくと信じて日本中が狂奔していたバブル時代に、誰かが「もう土地は上がらないんじゃないか?」と嘯く。その流れが伝播して、一気にバブルは崩壊してしまった。

同じように、もうこれ以上フレームを軽くしてもしょうがないんじゃないか?と誰かが嘯き、それが伝播して行った時、途端にこの明るい熱は冷めてしまったのではないだろうか。

カーボンという素材をもって生まれ変わったプリンス、ランス・アームストロングの呪縛から解き放たれたマドン。流麗な曲線で多くのサイクリストを虜にしたorca  etc….

2007~2009年頃に産み出されたフレームは、まだまだこの明るい熱に皆が背中を押されながら、各メーカーがカーボンの可能性を探るように自由で、伸びやかで、個性的なモデルが多かったように思う。

だけれど、競技機材として性能を突き詰めていくならやはりフレーム造形の最適な解は徐々に徐々に狭まっていく。力学、工学、数学的に応力を解析していくなら選択肢は狭まっていくのだ。徐々に、徐々に自由な伸びやかさは失われていく。

軽さと硬さを解く方程式は研究し尽くされ、これ以上はブランドが個性を打ち出せなくなっていくのだ。

そんな中でこのR3SLと他のいくつかのフレームが最適解を導き出してしまった。これ以上はこの道には進む先がない。もう昔のようには軽さと硬さの方向には夢を見ることが出来なくなってしまったのだとしたら。

だとしたらR3SLはカーボンフレームの黎明期、幼年期を終わらせてしまったフレームなのだ。

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ロードバイク インプレッション cervelo R3 SL  幼年期の終わり 3

cerveloのアイコンの一つだった超薄型のシートステーと極悪なまでに太いチェーンステー。フレームリアトライアングルで、担う応力をくっきりと二分する構造は、いつの間にか近年ロードバイクのトレンドの一つになってしまった。

scott addict SLにいたってはシートステーは強度的には無くても大丈夫、なんて事をプレスリリースで語っている。この大丈夫、は100人乗っても大丈夫な物置とどちらが大丈夫なんだろうかと考えてしまうのだが。

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ロードバイク インプレッション cervelo R3 SL 幼年期の終わり 2

木島平の晩秋。早くも迫りくる冬の足音を聞きながら、天気の良い日には惜しむようにして自転車に乗り込む日々が続いている。

恐らく今年最後になるライディングの相棒を務めるのは、およそ一年ぶりに乗り込むことになるcervelo R3 SL 。前日の雨が空を綺麗に洗い流してくれている。抜けるような青空の下で久しぶりのR3を満喫するはずだった….のだがちょっと困った事態に直面させられるのだ

 

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