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パーツいんぷれっしょん ~番外編 天然ブリ~

自転車名 天然鰤 ~Seriola quinqueradiata~
ブランド シマノを思わせる金属光沢
価格 1500えん(税込み)
サイズ 100cm以上なのでぶり
フレーム 木島平米

月に呼ばれて海よりきたる

母なる海に数億年の歳月を漂い続ける命の始原を、中空の月の重力が見えざる手となってかき回す。それらは複雑に絡み合い、秩序を形作る。

その秩序はまるでひとつの大きな意思の元にあるかのように振る舞い、増え、喰らい、死に、進化と淘汰を繰り返しながら幾つかの方向性に収斂していく。その方向性の現時点でのひとつの到達点、ブリ、鰤。学名をSeriola quinqueradiata

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海無し県と揶揄される長野において、良い海の幸を手に入れるのはもしかしたら人生の成功を手にするのと同じくらい難しいかもしれない。

信濃の国の住民は、長野県民として生まれた瞬間から、海に対して過剰な劣等感と戦い続ける宿命を背負わされるのだ。過剰なまでに自国の優を歌い上げる県歌「信濃の国」の裏側には海無し県の劣等感を覆い隠すための虚勢を張り続ける姿が見え隠れする気がしてならない。

沖縄、北海道、四国を始め、静岡、神奈川など本州の人間でも海と青春が結びつくイメージを持てる地域に対して過剰なまでの攻撃性を発揮してしまうのもこの県民の特性の一つでありながら、その実人一倍海に対する憧れが強いのもまた特性の一つ。

密かに部屋の壁に南国の真っ青な海とビーチのカレンダーが張ってある個人も少なくない。そして、おいしい海産物にも目がないのだ。

ペンションの仕入れに良く使う業務スーパーもとい市場にその日、1mは優に超えるこれまで目にした事のない巨大な鰤が棚に無造作に横たわっていた。思わず舌なめずりをしてしまう生粋の長野県民。そしてプライスタグに目をやると、天然ぶり1500円というありえないプライス。

こんな巨大な鰤を家族でどう処理しようかと考えあぐねながらもとりあえず買ってしまえ、と勢いで棚に並んでいる二匹をもってレジに突進してしまううちの父親であった。

それにしてもでかい。

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愛用の玉鋼製巨大出刃包丁がまるで耳かきに見えるレベルの巨大さ、そして天然物でありながらこのプライスタグ。いったい何が起きたのか。実はふぐなんじゃないか。食べたらその場でテトロドトキシンにやられて家族全員泡を吹いてカニさんの様になってしまうのではないか。

それでもいい。天然の鰤をもう嫌になるほど、鼻から鰤が飛び出てくるほど食べることが出来るなら。長野県民として海産物に対する鬱屈したコンプレックスから抜け出し、海べに棲む人々とも自然に相対することが出来るようになるのなら。

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最近は厨房の実権をほとんど僕に握られ、ボイラー室の奥にて待機を命じられることの多かった父親が、この時ばかりはと愛用の柳刃を振るう。見事なおつくりの皿を仕上げてくれた。

肝心の味は、というとぺヤングと一平ちゃんの違いがかろうじてわかる程度の鈍重な舌の持ち主である僕のインプレッションなので参考にしないでほしいのだけれど。

まず産地、おそらく日本近海であると思われる。この金属的光沢から察するにも、イタリアのカンパニョーロ社のカーボン表皮よりも金属のシマノといった趣がある。

口に含むと生臭さは微塵もない。天然物特有なのか、程よい弾力ともちもちとした舌触り、そしてある一点までトルクをかけるとほんの少し撓んだあとに、すっきりと噛み切ることの出来る身質のクリアーさ。このクリアーなフィーリングは7800系dura-aceの限りなく透明なシフトフィーリングに相通じる物がある。

確かに、磨きぬかれた金属を思わせる鰤の概観は同じく金属加工の美しさの粋を集めたような7800系dura-aceの趣があるかもしれない。

そして腹の部分脂の乗った部分、トロ。ブリトロの部分。口に入れる瞬間濃厚な魚のうまみととろけるような脂身の食感。

このとろける脂のスピード感、旨みと甘みが脳神経まで駆け上がるこのスピード感。箸が、米が、しょうゆが、わさびが止まらない。

このdura-ace級のブリを受け止めるフレーム(米)もそれ相応に素性のいい物でなくてはバランスが崩れてしまうかもしれない。最高級の炭素(米)を含有したフレーム(米)が必要なのだ。

その点においては心配は要らない。うちのフレーム(米)は極上のブランド米、「木島平米」なのだ。

極上の炭素フレーム(米)と最高級のコンポdura-aceを思わせる天然鰤の刺身。これぞまさしく至福の瞬間。そういえば

  • 関東 – モジャコ(稚魚)→ワカシ(35cm以下)→イナダ(35-60cm)→ワラサ(60-80cm)→ブリ(80cm以上)

とブリは呼び名が変わっていく。この表をみながら

ソラーティアグラー105-アルテグラーデュラエース

と名前を変えていくシマノのコンポ群を思い浮かべてしまった。

やはりブリはデュラエースに相当する。

とにかく、ご馳走様でした。母なる海に、豊穣たる大地に、天空をすべる月に、その重力の御技に、心からありがとうを言いたい。

 

 

 

 

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