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ロードバイク インプレッション BMC SRL01 カーボンフレームは電気羊の夢を見るか 4

もしかしたら他のどんなエンドモデルをも凌駕するかもしれない性能を獲得してしまった次世代のSLR01。

競技自転車としての理想的で完璧なまでに煮詰められた性能は背徳的、非道徳的ともいえるかもしれない。此れを超えようとするなら、既存の自転車の枠組みを逸脱しなければ無理なんじゃないだろうか。そんな考えすら浮かんでくる。

リアステーにサスペンションを仕込んできたドグマのエンデュランスモデルとか、ドマーネ、最新型マドン、ラピエールあたりのまた新しい風が吹いたバイク。そんな感じに此れまでのロードの常識では誰もやらなかった機構を組み込んだモデルならまた話は別だけれど、その辺になってくると話のくくりがまた違ってきちゃうんじゃないだろうか。

というか、内心あれはルール違反だろう、と突っ込みを入れたくなったのだ。僕にとってロードバイクというのは余計な物を身に纏わずに、人間のやるべき領域を侵してはならない物なのだ。

その範疇のギリギリの中で各メーカーが性能と個性を凌ぎあう。だからこそ儚くて美しい物だ、と認識している。

だからシートチューブ自体が独立して動いて衝撃をいなしてくれる、という機構は確かに有効だろうけれど、ことロードバイクという枠組みの中ではちょっとやりすぎではないか?と感じてしまうのだ。

確かにそれをやったら速くなるだろうけれど、それを始めてしまったら際限がなくなるぞ、と。といいつつ、ラピエールの新しいエアロモデルの女性的な曲線はエアロモデルというよりエロモデルといってもいい位に魅惑的なので、オークションでジャンクフレームが出たら迷わず飛びつくだろうけれど。

 

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とにかく今回のSLRの動的性能はその位にロードバイクという枠組みの中では煮詰まっている。それでもこのバイクの肝要たる部分を見つけたくて乗り込んでいく内にある考えが湧いて来た。

エミュレーター、もしくはシミュレーター。

若い時分、エレキギターのプロになろうと研鑽を続けていた時期があった。良い真空管アンプはやはり圧倒的に良い音がするのだけれど、価格もそれなりにしてしまうし、デカクて管理も大変なのだ。

そして登場したのがアンプシミュレーターという機材。

定評あるアンプの音を解析して、機械的に音を再現してしまおうという代物。出始めはまるで使い物にならなかったのだけれど、徐々に性能が上がりついにはプロがライブで使うレベルのものまで登場してしまった。

下手したら本物のアンプの数十分の一の価格とサイズで本格的なサウンドが楽しめてしまうのだから、技術というのは恐ろしい。

それでも、まだまだ本物の真空管アンプの気持ちよさには適わないのだけれど、今度は真空管搭載シミュレーターなんて物まで登場してきて、今後どこまで発展していくのか。

SLRに触れているうちにこいつはもしかしてシミュレータ、もしくはエミュレータなんじゃないか、という疑念が湧いてきてしまった。

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しかも驚くことに既存の全てのモデルを凌駕する程の性能を有してだ。

理想的な走行性能をシミュレートした、ロードバイクの形をした、ロードバイク以外の何か。それがSLRの正体か?

SLRの出自を思い出してほしい。専用の解析ソフトを開発し理想の性能にたどり着くべく、ヴァーチャルリアリティの中で数万回のシミュレートを繰り返したその果てに。形状、カーボンの積層、その他諸々の条件を確定させていく。

敢えて人の手、職人のカン、そういう数値外の要因を排斥して理詰めで作られたフレームなのだ。

SLRの本体は、質量をもった物体ではなくてPCネットワーク上に保管された数値データにある。

そういっても過言ではない。そしてそれを本国の自社工場ではなくて、敢えて台湾の工場で量産体制を整えている。

・・・そんな事を考えていると、このSLRという物体がとたんに冷たい物に思えてくるか?

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否である。実際に乗った人間にはこのバイクもまた、信念と情念の込められた暖かいバイクである事を知っているはずだ。

そしてまた一つ、認めなければならない事実に直面する。「魂と感情を有する僕達人間もまた、突き詰めて行ったら遺伝子のコードに刻まれた記号と情報の集合体である」

ならば数式と記号の積み重ねで作られたカーボンフレームに、魂と感情がないと誰が言い切れる?そして人間に魂と感情があると誰が言い切れる?

・・・こんな事を考え続けていると狂気の狭間に陥りそうになる。BMCの技術者達ももしかしてそんな有機物と無機物の境が曖昧になる幻想に囚われてしまったのだろうか?勿論全ては僕の妄想の域を出ない。

 

VOL5

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