lgp01a201309301000

sheky`s 談話11 生と死と、再生の物語

シェーキーズ新宿店は珍しく地下にある。必然、私達はpizzaに満ち満ちている自然の息吹や、むせ返る様な野生の血生臭さ、チーズの流れ落ちるスピード感、そしてトマトソース。そんな物を身に取り込もうとするなら地に下る必要がある。

中東一神教を初め多くの宗教神話においては咎人が終わらない責め苦を味わうのは地下にある地獄である。

方やチベットやインカ文明を代表として、地下奥深くにはシャンバラや黄金境が眠っているという伝承も少なくない。

ギリシャ神話のオルフェウス、古事記、イザナミの黄泉下りのように死と再生をモチーフとした神話もある。

大抵の場合、こうした神話の中の死と命の誕生はワンセットであった。それは死を恐れる生物としての本能が、どんな偉大な王でも逃れることの出来ない、「死」という絶対者への恐怖を克服するために作り上げた概念なのだろうか、それとも古来は合理主義の蔓延する現代に比べ、死と生の境界が曖昧だったためなのだろうか。

ともあれ、新宿店の階段を下り、地の秘蹟に足を踏み入れる。そしてチーズとトマトを身に取り込む事で我々は新しい生を手に入れる。近代都市新宿の片隅にもこうした古代から続く人々の営みは形を変えて息づいているのだ。

この日、私もまた幾度と無く繰り返されてきた死と再生の儀式にあずかろうとしている。

掌に他人の掌を重ねながら新宿店の重厚な扉を、押し開く。

手汗にまみれた掌で磨きぬかれた取っ手を触るのに一瞬躊躇してしまう。おもわず「これは汗じゃなくてオリーブオイルだよ」と誰に言うでもなく言い訳をしてしまった。

ぎいと軋むことなく、重さを感じさせることも無く滑る様に扉は内側に開き、外界の空気が流入する。外界の軽薄な空気から一転、荘厳な空気に満たされた店内に足を踏み入れ、軽い眩暈のような物を感じてしまった。

「niceシェー・・・・・」聞きなれたいつもの挨拶が、しかし私とその連れ合いの姿を認めると、最後の「キー」を言い放つ前に言葉は中途半端な放物線を描き地に落ちてしまう。

妙齢の女性を連れて入店してきた私の姿に事の重大さを察するのだ。「・・・・キー」搾り出すように受付の女性は口にすると、いそいそと来店の手続きを進めてくれる。

かねてから人生の一つの目標があった。女性を連れ立ってシェーキーズに赴き、人生の重大な何事かの話を語り合う。その願いがついに実現する日がやって来たのだ。

出来れば、多くの人たちにその門戸を開き、常連は勿論、敬虔なるpizza司祭から一部でshe海文書(シェカイモンジョ)とも呼ばれている、パンフレットの内容を暗記していないビギナーまで、老若男女様々な人々が利用しやすい高田馬場店が良かった。彼女は人生の中で数えるほどしかシェーキーズのpizzaを体験した事がないのだ。かつての私のホームグラウンドでリラックスした雰囲気で事を進めたかった。

それでも、なれない私達を暖かい天使のような笑顔で迎えてくれた新宿店のスタッフ達には感謝しかない。どうか、彼らに人生の祝福が満ちますように。

この女性とは、結婚の約束をしている。そんな女性に人生の一部といえるシェーキーズを知っておいて欲しかったのだ。彼女の目にはこの空間はどう映るのだろうか。彼女とこの価値観を共有できるかどうかが、今後の人生の趨勢を大きく左右することになると思うと、今日はトマトソースものどに詰まりそうになる。

結果、彼女もpizzaの虜になってくれた。心の美しい人間なら必ず理解してもらえると信じていた。pizzaは己を映す鏡、と良く言われてるのだ。彼女の人柄と、万人を魅了するpizzaの魅力を再確認させられ、胸が熱くなる。今日はもう、カロリー制限を取り払う事にしてただただ迫りくるpizzaの、チーズの、トマトの、オリーブの、サラミの、ハラペーニョの奔流に身を任せることにした。

味覚を通して脳細胞が徐々に覚醒し、やがて忘我の境地に足る。光の中で宇宙の真理の一端に触れた気がする

「そうか、そういう事だったのか」

その神に触れたような全能感は店を出て、秋風が汗を乾かすころにはすっかり忘れてしまうのだが、それでいいのだと思う。

そうやって食べ進む中、いつも見慣れた定番のサラミpizza、敷き詰められたサラミ一つ一つが命を持ち語りかけてきてくれたような気がしたのだ。

おめでとう

おめでとう

おめでとう・・・・・・・・・

 

ありがとう、全ての人に、全ての光に、全ての生命に、ありがとう

某アニメのテレビ版最終回のようなモノローグが頭の中に再生されていた

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA